「塔」12月号の名歌選を14日のうちに終える。私が歌を読むスピードはマッハの速度である。ほとんど直感で赤丸
チェックをつけていく。もちろん、後から熟読するが、ノーチェックの歌があとからよく見えることは99・9999%ない。直感が大事である。また、いくら選歌欄で評価されていても、つまんねえと思った歌はやっぱりつまんねえ。つまり、私の選歌こそが絶対なのだ。塚本邦雄の選よりも私の選歌のほうが、よいのだ。どうも、名歌選の「その1」と「その2」とで
アクセス数にばらつきがある。その原因は、よくわからない。「その2」は、時期を置いて発表します。
今月の赤丸歌。池本欄若葉集、108首。澤辺欄、137首。吉川欄、187首。計432首。
「塔」12月号「陽の当たらない名歌選」その1
おのづから淘汰をされて地に還る栗の毬かも青き寄り添ふ 藤本北夫
立方体に重なる歌集の上面は空、側面は波のようなり 花山周子
登校する
子供の列につきゆけば八十年の生涯軽し 福代加根夫
未踏の空を初めて飛んだ始祖鳥はやけくそだったのかもしれない 関野裕之
トマの耳オキの耳立つ谷川岳霧うごく瞬時(とき)残雪かがよう 赤塚マスヨ
温泉に浸りて文庫本読む人に近づけばばつと離りゆきたり 相馬好子
きみの名が
はじめて活字になりし日よ督促状を見る日がくるとは 太田 愛
昭和二十九年九月二十九日九十歳わが母逝けり九に囲まれて 永井千裕
トランクスの柄の好みが違うなりわが家の男三人を干す 増田美幸
バスから降りる時に見えたる三日月はどこにもあらず 前にをんなが 北神照美
目覚ましが鳴るより早く目が覚めて目覚ましが鳴る瞬間を待つ 相原かろ
メール画面見せつつ会話する聾者二人ありて車内を区切る静けさ 吉田淳美
条幅に何時か母さんの歌を書く子の夢叶い床に掛け見る 井出詩子
爪先に重みを預け上り来て薄白月の真下に立ちぬ 大久保 明
仏前に紙銭を焚けば幼らは互いを見つつ姿勢を正す 大城和子
冬眠の熊はくせなく美味なりとまたぎの娘は明るく言へり 川街疇郢メ
釣師浜踏み蹴る砂の重たかり潮の香仄か日の出待ちおり 佐藤和彦
山の湯の水面にひかる弓月の弦絞らるるわれの裸身に 進藤サダ子
「阿賀に生きる」命の貴さ撮りし佐藤真(さとう)さん飛び降り己が命絶ちしと 鈴木啓三
忘れもの係へ傘を取りにゆけばお礼のように雨降りはじむ 遠田有里子
歌集読む表紙を眺むる朝も夜も有沢螢、われの明滅 山沢靖子
ドサッという音して蛇の土間に落つ燕の卵みっつほど飲み 渡辺久美子
通夜にゆく我に添ふごと虫は鳴き晩夏の闇のいよよ濃くなる 植松文子
もう一度起きて力を振り搾って その管抜いて そうして死んで 鈴木 聞
まあお似合いですよと褒められて脱ぎ捨てた冷房過剰の
喪服売場で 沼尻つた子
come onと声かけやれば鈴鳴らして駆けて来るなりカナダの子猫 奥貫洋子
腎病めば嫁が管理のわが昼餉兎のエサと左程変らず 相澤大也
少年の胡瓜をかじる小気味よさ音の聞こえて夏暮れてゆく 磯部葉子
吹きやまぬ風に波うつ
カーテンをダンスするよう抱きとめて巻く 宇梶晶子
吹かぬより吹くが寂しき秋の風閉店知らす茶舗の貼り紙 吉村成一
今号もいい歌が多く揃った。なるたけコメントを多くしたい。