2008年06月06日

1069 「人妻集団暴行致死事件」

      今日のMYビデオ

「人妻集団暴行致死事件」(1978年日活、田中登、原案・長谷部日出雄、脚本・佐村乾、音楽・アビスリ)室田日出男、古尾谷雅人、深見博、黒沢のり子、志方亜紀子、小松方正ほか

 公開当時、リアルタイムでこの映画を見たとき強い衝撃をおぼえた。暴行された黒沢のり子の、死後硬直を起こした死体の映像が強烈に印象に残った。ただ、ひさびさにビデオで見直して、「なんて哀しい作品なんだ」と胸が熱くなった。この映画には、悪い人間が一人も出てこない。しかし、不幸のスパイラルが止めようもなく人々を巻き込んでゆく。舞台は埼玉県だが、都会の近郊都市がどんどん都会の一部として侵されていくなかで若者たちが知らず知らずに狂っていくという生態を、病んだ風土性の中で見事に描いている。そして、この映画において何より哀しいのは、人は理解しあったつもりでも、それは錯覚に過ぎないということだ。ロマンポルノらしく、それを性愛の問題に置き換えて、見事にそれを描きだしている。室田日出男は、それでなくても名優だが、これは彼の代表作の一本だと断言していい。理解していたつもりの妻が、若者たちに輪姦されて死んだことによってはじめて、彼女が心臓の苦痛をこらえて自分に抱かれていたと気づくのだ。ちなみにこの奥さんは、多少頭の足りない、それだけに夫に気をつかう人物である。黒沢のり子は、そんな優しくて被害者に生まれついた女性を見事に演じている。
 この作品の偉大な点は、まだ、都会近郊のベッドタウン化に伴う地域の荒廃や、先住民と移住民の意識のギャップからくる軋轢、それに伴う若者のストレスや犯罪性の高まりなどに、1978年という時代に着目していたことだ。中上健次の「さらば愛しき大地」とその柳町光男による映画化が1982年であることを考えると、たいへんな先見性と言える。たぶん田中の言いたいことを全部言ったらこの映画は1時間50分くらいになったと思うが、ロマンポルノ枠の哀しさ、90分が限度であった。田中のもう一本の代表作「マル秘色情めす市場」は、本来120分の映画だったらしいが、ロマンポルノなのでなんと83分までにカットされている。残念なことだ。いずれにせよ、この「人妻暴行致死事件」は名作である。キネ旬のオールタイムベスト100に唯一入ったロマンポルノである。ロマンポルノには、実は秀作が多い。そして、この秀作群は、「ポルノ」と銘打っていながらオカズ目当てにもぐりこんだ客のハートとチ×ポをずたずたに引き裂いて、インポ状態にするというすばらしい文学である。俺なんか、セックスそれ自体がいやになるくらいである。
 ところで、このビデオは、「今日は見るだけよ」というノリでひやかしに行った店で見つけ、はっと気がついたらわたしの財布はカラになっていた。けっこうな値段であることに憤慨したわたくしと店主との会話。
私「マル秘色情は安いのに、なんで人妻暴行はこんなに高いの!?」
店長「マル秘色情はDVD化されているのに人妻暴行はされてないんですよ」
私「なんで!?」
店長「多分、先にDVD化したマル秘色情が売れなかったので人妻暴行も出さないのではと」
私「なんでマル秘色情が売れないんですか!」
店長「さあわかりません。マル秘色情が売れないから人妻暴行も出ないし、だからこういう値段をつけざるを得ないということです」
 この会話をはたで聞いてる人がいたら、鬼畜AV専門店の店長とどすけべ客の会話にしか思えないだろう(笑)。
 諸君。タイトルはアレだが、二作品とも、ニューシネマの名作を見るごとき、哀しい思想性とシュールさに満ちた名作である。こんなものを冷やかしのはずが見つけてしまったがゆえに金に羽が生えたごとく飛んで行く。歌集を買う金などないのだ。
なにはともあれ、歌人の皆さん、もっと日本映画を見ましょう。
ニックネーム 茶トラのみんく at 22:55| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記
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