2008年06月16日

1077 激戦!「塔」6月号「陽の当たらない名歌選」1

 毎月歌を読み、赤丸チェックをつけることには何の労苦もない。それだけだったら一時間もあれば終わる。問題なのは、この日記にアップするために三十首に絞りこむ作業だ。切っても切っても切っても切っても三十にならねえ!三十首に絞ってアップするというのはもう限界かもしれないが、これ以上増えると、俺が書き写すのも大変だし読者も疲れるだろう。絞り込んだ三十首を、読者はじっくり鑑賞していただきたい。前半後半に分けて(つまり合計60)こんなにしんどいのだ。泣く泣く紹介できなかった歌が、選歌欄評に取り上げられることを心から願っている。
 今月の赤丸歌(その1)、小林欄若葉集106首。黒住欄、186首。真中欄、149首。計441首。

      「塔」六月号「陽の当たらない名歌選」その1

この道の角曲がるたび重さ増ゆ「過去」とはまるで子どものやうで 相澤豊子

私が歌会へ行く日は庖丁を研ぐ日と夫は決めているらし 枡田玲子

通りやんせ くちなは坂は火点し頃影が迷へるごとく行けり 筑井悦子

お互いの残る時間の見えて来て黙って妻の車椅子押す 外輪清孝

水仙の清しき香りの中に佇ち岩打ち返す波の華みる 東 紀子

いつよりか寝室分ける齢となり夫は句作り吾は歌を詠む 岡崎富貴恵

朝日背に作業をこなす青年の服にとび散るペンキはアート 加藤 紀

ごうごうと音立て雲を掃除機が吸っているのと子が空をさす 多 昭彦

ローンにて家を逐はれし人たちの野宿の小屋に星条旗なびく 広瀬 守

草かげの蛇の骸が白骨となりゆくさまを通るたび見る 石飛誠一

二階にて夫が大きなくしゃみする一人じゃないと思う瞬間 渡辺久美子

ゆっくりと冷めていく風呂出られずに冷え切るまでの時間を計る 新井 蜜

子育てもやりがいあって楽しいと言いつつ隠すささくれた指 飯村みすず

嘘くさい咳をしており明後日の運動会は休むつもりか 乙部真実

春昼に降りこぼれくる光あり君の喉の水飲む音す 古賀公子

両腕を切り落とされし柿の木の冬の夕べに影として立つ 関野裕之

どうしても出てこなかった歌手の名がある日現れリピート続ける 三浦こうこ

行ったことなけれど毎月封書出す京都市大枝西新林 森 富子

挨拶も返さぬ人と向かい合う配置は四月もこのままらしい 美野冬吉

十二色の一番端にいつまでも長いよ白の色鉛筆は 加藤都志恵

おそろしき量(かさ)のさくらが咲き揃う予感のありて乳房太くする 植田裕子

授乳できぬ乳房をしぼる病室に隣接しているトイレで一人 片山楓子

母が父にしてゐたやうに死に人の開きたがる口の顎を支ふる 首藤よしえ

気づかれぬように泣くとき痛くなる僧帽筋と知ってしまいぬ 加藤ちひろ

満月がしかめっ面に見えし夜は黄卵ひとつご飯におとす 歌川 功

平日の序列そのまま座りいて十三号車はひとつのオフィス 岡山あずみ

あえかなる師への憧れ「朝霧」とうドラマをラジオで聞きしそのころ 児島良一

うとうしい、お前は消えろと言われても話さねばならぬ担任として 澁谷義人

笑ひゐるこの一時も過去となる椿のくれなゐ落ちるか明日は 北村美代子

一生(ひとよ)かけローン払はむこの家のベッドに夫が近づける音 助野貴美子
ニックネーム 茶トラのみんく at 23:29| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記
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