今月の赤丸歌(その1)、小林欄若葉集106首。黒住欄、186首。真中欄、149首。計441首。
「塔」六月号「陽の当たらない名歌選」その1
この道の角曲がるたび重さ増ゆ「過去」とはまるで子どものやうで 相澤豊子
私が歌会へ行く日は庖丁を研ぐ日と夫は決めているらし 枡田玲子
通りやんせ くちなは坂は火点し頃影が迷へるごとく行けり 筑井悦子
お互いの残る時間の見えて来て黙って妻の車椅子押す 外輪清孝
水仙の清しき香りの中に佇ち岩打ち返す波の華みる 東 紀子
いつよりか寝室分ける齢となり夫は句作り吾は歌を詠む 岡崎富貴恵
朝日背に作業をこなす青年の服にとび散るペンキはアート 加藤 紀
ごうごうと音立て雲を掃除機が吸っているのと子が空をさす 多 昭彦
ローンにて家を逐はれし人たちの野宿の小屋に星条旗なびく 広瀬 守
草かげの蛇の骸が白骨となりゆくさまを通るたび見る 石飛誠一
二階にて夫が大きなくしゃみする一人じゃないと思う瞬間 渡辺久美子
ゆっくりと冷めていく風呂出られずに冷え切るまでの時間を計る 新井 蜜
子育てもやりがいあって楽しいと言いつつ隠すささくれた指 飯村みすず
嘘くさい咳をしており明後日の運動会は休むつもりか 乙部真実
春昼に降りこぼれくる光あり君の喉の水飲む音す 古賀公子
両腕を切り落とされし柿の木の冬の夕べに影として立つ 関野裕之
どうしても出てこなかった歌手の名がある日現れリピート続ける 三浦こうこ
行ったことなけれど毎月封書出す京都市大枝西新林 森 富子
挨拶も返さぬ人と向かい合う配置は四月もこのままらしい 美野冬吉
十二色の一番端にいつまでも長いよ白の色鉛筆は 加藤都志恵
おそろしき量(かさ)のさくらが咲き揃う予感のありて乳房太くする 植田裕子
授乳できぬ乳房をしぼる病室に隣接しているトイレで一人 片山楓子
母が父にしてゐたやうに死に人の開きたがる口の顎を支ふる 首藤よしえ
気づかれぬように泣くとき痛くなる僧帽筋と知ってしまいぬ 加藤ちひろ
満月がしかめっ面に見えし夜は黄卵ひとつご飯におとす 歌川 功
平日の序列そのまま座りいて十三号車はひとつのオフィス 岡山あずみ
あえかなる師への憧れ「朝霧」とうドラマをラジオで聞きしそのころ 児島良一
うとうしい、お前は消えろと言われても話さねばならぬ担任として 澁谷義人
笑ひゐるこの一時も過去となる椿のくれなゐ落ちるか明日は 北村美代子
一生(ひとよ)かけローン払はむこの家のベッドに夫が近づける音 助野貴美子
![Powered by 269g[ブログ・ジー]](http://269g.jp/img/269g.gif)