剥きだしの敵意の視線浴びた日はちびた石鹸(シャボン)でかほを弄る
敵持てる幸を感じて食む鮭の辛さほどよくしやうゆはいらぬ
鈍色の軍艦マンションに見つめられ青信号待ちわれは立つてる
一ドルではなんにも購へぬTOKYOの百円ショップはけふも賑はふ
一ドルは一年なりと覚えたる時代のありき 三百六十五円!
ライスカレー水がとつても旨かつた銀のスプウンカップに立てて
『サンセット77(セブンセブン)』をみをはりて鬱は深しも明日は月曜
東京に聖火灯りしあの日からどの年もただ四桁の数字
わが町で最初に受話器持つ祖母の写れる地方紙母は誇りつ
鄙にては美(は)しきひとやも参観日和服着こなしひとり目立ちぬ
数人のをのこ記憶にあらはれてわが頭(かうべ)撫で葬列に消ゆ
山奥に佇つ一軒家に幸せの原風景あり 生家にあらず
紙芝居読んでくれたる美智子姉(ねえ)の声はやさしもかの日の雷雨(あめ)に
拐ふがに没陽は紅し泣き泣きての甃(いしみち)の頂跨ぎゆくとき
タケダタケダタケダタケダタケダタケダタケダターケーダーの昏き夕餉
いつとだに知れぬ幼日陰画(ネガ)として小倉の城は愴然と佇つ
逆上がりショートパンツ運動場(グランド)の本間千代子の白がふうはり
女学生涼しき襟元直(す)ぐな喉影だに落ちぬその歩みかな
原稿用紙におほきく本間千代子と書く泣きたくなるよなながあい夜に
愛し合うには早過ぎてと口遊む死んでしまふには遅すぎる俺
六十歳(ろくじふ)の本間千代子に信濃路で出遇へる気がした冬のスピッツ
杳き日の五輪の聖火の梯(かけはし)と顕ちたる女優(ひと)のあつき黒髪
奈良漬をぶぶ漬けで流し夕餉終ふ真闇の消えて久しきものかは









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