2008年07月14日

1096 「塔」陽の当たらない名歌選、上半期ベスト20

 恒例の、上半期ベストを発表する。これは、自分の歌を発表するのと同じくらいリキが入る。なぜなら、自分の人生観がそこに反映されるからだ。他の誰にもない、私だけの選歌集であり、自分の好きな歌が他の人のそれと一致するとむしろがっかりする。じっくり鑑賞していただきたい。

「塔」上半期「陽の当たらない名歌選」ベスト20

真向かへば追ひつめてしまふ母われに 電話を切りしのちの底冷え 澄田広枝

かうやつて貴方をぢつと見てゐると貴方が誰かわからなくなる 飯村みすず

田仕事を終へたる妻は鍬握るかたちに指を曲げて眠りぬ 郡山紀男

夕焼けをまはす少女の縄跳びのひらりひらりと堤をゆけり 田附昭二

磨ぎ汁を幾度もかえて思いおりわが子を橋より落とす瞬間 永田聖子

猫の土葬終えて病院に戻る夫 それが最後の仕事となりぬ 西藤光美

凩は龍笛となり過ぎゆかむけものも通るちちははの墓 小沢婦貴子

曲がったらすぐにわかるよ その道は干し大根のにおいがするから 高橋香澄

宴会場の汗にしめりし衿元を衝立の裏に回りてふきぬ 谷口かず子

てのひらは静かな夜に思い出すふるさとに老いて眠るタローを 松村正直

もう泣くな分かつたからと言ふ父の睫毛が不意に長く見えた日 澤村斉美

身長をシャクトリムシに測られた僕はもうすぐ死ぬのでしょうか 山上秋恵

気づかれぬように泣くとき痛くなる僧帽筋と知ってしまいぬ 加藤ちひろ

誰からも好かれる人に嫌われて夜の渋谷の沖へと向かう 高橋武司

あおぞらが憎悪に変わっていくまでをきっちりと革の手袋を嵌める 沢田麻佐子

病人と死人の歌ばかりだな「塔」伏せ眸を閉づホスピスの父 沼尻つた子

をちこちに屋根より落つる雪のおと手紙の前文長くなりゆく 山地あい子

のこぎりで八つに分けて処分されしダブルベッドはちちははのもの 尾崎知子

不忍の枯れ蓮の間(あい)通るとき確かめたきことひとつ聞きたり 黒沢弘子

食卓のトマトが鬼の心臓に見ゆると君に言ひてさびしき 苅谷君代

 僕は、肉体感覚のない歌は駄目だと思っている。「塔」には選歌欄評が多いが、私の選んだあまたの「肉体歌」をまったく無視しているあたり、本当に上から下まで読んどるのかと疑問に思っている。いや、そのために名歌選というのはあるのだな。名歌選を始めた理由の一つは、「いい歌が全然採られてねえ!」という怒りである。いや、「塔」に限らない。一線級の歌人かどうか知らないが、僕は、彼らの選歌というものが信用できない。だってつまんねえ歌ばっかり選ぶんだもんな!!!!!読者は、私が選ぶ歌こそ、才ある歌人と記憶に留めて間違いないのである。
 なお、短歌人上半期ベストは、来月発表します。
ニックネーム 茶トラのみんく at 22:25| Comment(2) | TrackBack(0) | 日記
この記事へのコメント
先月の選歌と少なくとも3首は重なってますが
なんなんでしょうか。
Posted by おせっかい at 2008年07月14日 23:22
 よく題名と序文をお読みください。「上半期」のベストであって「今月のベスト」ではありません。言うなれば、ベスト・オブ・ザ・ベストです。
Posted by ひでお at 2008年07月15日 23:25
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