弾まない隣りの会話聞こえ来る互みの帰省語る男女の 黒田英雄
福岡と名古屋を故郷にもつといふ女男(めを)の関係読めず歌集(ほん)読む 同上
喫茶店もイマイチだ。結論として、歌集を読むのに集中力を高めるいちばんふさわしい場所とは、ずばり、夜の地下鉄である。不思議なことに、地下鉄で歌集を読んでいたら周りはうるさいのだが、全く気にならなく集中力が高まる。これは不思議だ。照明が変わらず、温度が一定で、他人の会話も聞こえにくい。これに加えて適度な震動がある。人間というのは不思議な物で、まったくの静寂の中では眠れず、完全に刺激のない状態では読書も執筆もできず、いい考えも浮かばないそうである。俺は、歌集を読むために大江戸線をぐるぐる回ろうかと思っているくらいである。
今、俺が熱中している歌集は、以前にも日記で書いたが、笹井宏之「ひとさらい」、谷村はるか「ドームの骨の隙間の空に」。この二冊は、小島なお以来の、若手の第一歌集出版として出色の出来だと僕は断言する。現代歌人協会賞の候補作にならなければ絶対おかしい。この二歌集はエキサイティングな歌集だ。読者を引き込む独特の引力がある。学びたい。
歌集を読む場所にふさわしいのは夜の地下鉄である。そういえば、俺も、地下鉄に乗っていて、フレーズがわくときがある。夜の地下鉄こそ、短歌を作る源かもしれない。
今日の4首
「過古」といふ誤字を見かけた一瞬に遠く吹き飛ばされた片々 谷村はるか(以下同)
なぐりつけて泣かせてくれよそうでなきゃ負けたことにも気づかないから
顔を上げろ会ったって誰も気づかないどこにでも居るカラスなんだから
チャチな背中に弱ささらして気づかない男みたいだこの町のビル街


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