混血のジェリー藤尾が唱ふからギンギンギラッと夕陽は沈む
手榴弾その遠擲のすぐれたる新兵の名は沢村栄治
白球(ボール)捨て米兵に擲つ手榴弾あの草薙の空は還らず
山宣の治安維持法改悪の反対演説瀑布に聞こゆ
すめらぎをついに灼かざりそが魂の有処海へと御滋羅は還る
濁世なる塵尽きるまで寝ねがたく躰を火照らす総懺悔の夜
日野てる子に似てゐし母の口癖はあんたの貌は父親そつくり
ドライブとふレジャーあれども母と吾と腰低かりき男がひとり
立ち寄りしレストランにて観たTVは丹波哲郎『弁慶』なりしか
よく笑ふ男が焼肉啖らひつつ自社株自慢を母に語りつ
こひびとの皮革(ひかく)の香たつ車内なる男のポマアド母の香水
お通役の入江若葉に理由(わけ)もなきリビドオ覚えハンバーグ噛む
黒柳徹子の「魔法のじゅうたん」を欲しと希ひきひとりゆふべに
日曜の夕餉どきには消えてつたザ・ピーナッツはせつなき埴輪
盗み酒関門海峡陽は落ちてビールは麒麟とさだめけるかも
「塔」掲載歌より、8首目、14首目、15首目は推敲して載せた。十二月号「塔」に出詠した歌は、選者の取捨によってまるで郷愁に満ちた連作のような構成になってしまった。よって、落とされた四首を補って作者の意図を伝えたいと思う。読者には、わかるはずだ。
僕は今日、栗木京子「けむり水晶」を読みながら年を越すと思う。来年は、よい事があれ、とは思わない。ただ、悪い事がないようにと願うのみだ。みなさん、歌を一首でも多く作りましょう。読者の皆様、よいお年を。
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