仙波の写真を、カバー見返しで初めて見た。まさに、売れない新劇二枚目俳優のようなご面相で好感を持つ。他人とは思えない。また、高田流子氏によるインタビュー記事や、藤原龍一郎氏による、自らの歌人としてのあゆみと仙波の姿を重ね合わせた跋文も読みごたえがある。正直僕は、歌論を読むなんてもううんざりである。つまらない歌論を載せず、仙波龍英という人物をまったく知らないだけにいっそう僕にとって興味あるその人物像に迫った文章を併載してくれた編者の慧眼に感謝するものである。
それにしてもだ。歌壇というのは馬鹿ではなかろうか。1985、「三月兎」が出版された当時は、仙波もまたライトヴァ―スのひとつだと言われていたらしい。アホか。表紙が吾妻ひでおだというだけでそう思ったんだろお前ら。と言うか、吾妻ひでおを本当に知っていたのなら、なおさらライトヴァ―スだなんて思うわけがない。可愛いマンガ絵だからこの馬鹿どもは頭からそう決めつけただけのだ。頭にき、のつく某歌人などは、この表紙のことを「アニメ絵」と評論で書きくさった。全然別ものじゃばかもの。歌人というのは、くだらん理屈ばかり先行させて、歌そのものを見る直観力にはなはだ欠けている。まさに、インテリ馬鹿というやつだ。だからこいつらの歌論は面白くもなんともないのだ。仙波龍英のどこがライトヴァ―スだ。彼の歌は、現代と、オノレという存在に対する呪詛の連呼ではないか。たとえば同時代もてはやされた俵×智の、現実肯定に満ちたいやらしいいやらしい歌集と、加藤治郎のごとき気障の権化で痛みの全く感じられない修辞遊び、それらと仙波の歌にどこに共通点があるというのか。賭けてもいいが、仙波をライトヴァ―ス呼ばわりした歌人どもは、中身も読まず、(もちろん吾妻ひでおも知らず)表紙絵のイメージだけでそういうことをぬかしたのである。イメージを前提に歌論を組み立て、まず結論ありきでオリジナリティのかけらもなく、それだけでなく、事実に即してさえいない、という歌論が(どこの文学も同じだがとくに短歌は)蔓延しているのである。ちったあ変わったこと言ってみろってんだ馬鹿共。
そうですか。仙波の第一歌集が出たのは1985年ですか。その当時の私といえば、短歌などというものは存在すら知らず、売れない芝居を一生懸命やっていた。性欲食欲ともに絶好調のときであり、食ってはやり食ってはやりの毎日だった。80年代なんぞというのは、歴史のたんつぼと言えるような時代だった。私の貧乏劇団にも、某ビール会社から40万円の広告料をいただいた。よっぽど金が余っていたのだろうこの資本主義の走狗め(助かったけど)。そういう時に仙波が歌集を出していたんですねえ、全然知らなかった。また、藤原さんの後書きにはショッキングなことも書かれている。僕は、人間仙波に迫った、ドキュメンタリー的な文章を読みたい。この人については謎が多すぎる。第一死因がよくわからない。また、彼の呪いのメンタリティのよってきたるところを、その一代記を通じて知りたいと思うのである。歌論?いらんいらんそんなもんいらん。歌人の書く歌論なんてクソである。歌人の人間性を炙り出すような歌論など読んだことがない。いや、ある。塚本邦雄が「成人通知」に寄せた浜田康敬論、それのみである。例えば僕は、近藤芳美を語った評論などいっさい読んでいない。なにが述べられているかおおかた見当はつくからである。誰も近藤がロリコンじゃないのか?とか、崇拝のあまり女性の本質が見えてないんぢゃないのか?とかいうことを書いていないのが見え見えである。また、岸上大作にしても、革命のロマンと恋だのなんだの綺麗事ばかり書きくさって。彼に短歌を書かせた原点は、母が祖父に犯され続けることによってやっと衣食を確保できた、この根本的で救いのない貧しさにある。誰もそれをはっきり言わんではないか馬鹿野郎。とにかく俺は、いわゆる歌人が総合誌向けに書く歌論、歌人論の奇麗事とオリジナリティのなさにうんざりしている。もっとその歌人の人間性(いい意味でも悪い意味でも)を暴き立てるような歌論を書いてみさらせ。もっとも掲載はされないだろうけどな(笑)。だからダメだと言っているのだ。
繰り返すが、六花書林の、「仙波龍英歌集」出版は偉業であると僕は思う。宇田川寛之氏、いい仕事をしたものだ。2000円では安い。500円くらい色をつけて送金しようかと思ったがこっちも貧乏なのでやめた。買って損はない歌集であります。僕は、藤原、仙波と違った形で、固有名詞短歌を乱打したいと思う次第である。そういう意味で励みになる今回の刊行であった。
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私は糖尿なので、げっと恐怖しましたから。ただ裏の?死因は知りませんよ。同じかもしれないけど。
アルコールが過ぎたところがあったようななかったような、酒飲みでないので興味なかったし。