2007年09月18日

881 「塔」九月号「陽の当たらない名歌選」その1

 「塔」が、ついに1000人体制になったそうだ。これは当然の成り行きだろう。ほどなくして、2000人を突破するのはほぼ間違いない。今、気風の自由な、風通しのいい結社と言えば、大手では「塔」「短歌人」が両巨頭であろう。この二結社には、会員の増える条件が揃っている。それほど、他の大手結社というのは息苦しく抑圧的であるらしい。それについてはまた書きたいと思っている。
 てな訳で、全部の歌を読んだうえで三十首に絞るというのがもう不可能になった。よって、六選者の六選歌欄を二つに分け、その中からそれぞれ最高三十首ずつ選ぶ、という方式に切り替えた。名歌選が二日続くが、よろしくおつきあいいただければ幸いである。
 今月の赤丸歌。吉川欄作品1、259首。澤辺欄、142首。池本欄、186首。花山欄、190首。栗木欄、178首。真中欄若葉集、105首。計1060首!いったいどないせえっちゅうねん。

 真中欄若葉集・栗木欄・花山欄
      「塔」九月号「陽の当たらない名歌選」その1

始まりと終はりある旅物干しに忘れしシャツのごと我を待つもの 大河原陽子

一丁の豆腐提げてゆくゆうぐれは知らない路地に入りたくなる 徳重龍弥

たちあふひ咲けば思ほゆ押入れの奥より蚊帳をはじめて出す宵 渡辺のぞみ

ダム決壊そんなここちに午前二時酔いつぶれてるディランを聴いて 足立一生

傷多き無声映画のように聞く耳なりの向こう母の呼ぶ声 上條節子

笑わされてこわばっている人の顔その口紅の濃さを忘れず 岡本 潤

親からも打たれしことはなかりしと少女は男を打ちやまぬなり 加藤好男

あの山の向こうにきっと何かある思いし少女も山も削らる 潮見克子

胃の中を鮮血パシッと広がりぬ怪しきポリーププチンと取りて 福岡英一

手のひらの夕やけ色を握りしめしばらくは誰も怨みたくなし 宮下美智子

巨き象のかたみに膝まげ演技するしなびた乳房のかすかに揺れて 山崎好志子

春祭り芸能大会司会者の夫を着メロ「革命歌」にて呼ぶ 山下れいこ

樗谿(おうちだに)神社の口にあかりひとつ離れてゆくのは誰であろうか 荻原 伸

水島先輩と慕いてくるる後輩のあれば吾が子を見直すすこし 水島 修

木下闇「ハブに注意」の絵看板色あざやかに基地に向きおり 伊波邦枝

女性にやさしい職場というがあるらしいそんなものみな消えてしまえい 加藤ちひろ

水着とはそういうものと思いしにずっときつかったスクール水着 川野久子

労働と呼んでしまうは寂しかり家事には母のポエムもあれば 佐野喜洋子

渋滞の交通情報ながれくる二等船室いびき聞こえる 杉浦登代子

全身で泣く事やめしはいつならむ「自立自立」と追ひたてられて 高城惠美

独身の我の異動におみならの歌ってくれた「真っ赤な太陽」 林 広樹

夕飯を卓にならべて寝る妻の頭をなでやりぬ帰り来しとて 湯口拓成

父の柩に入れ忘れたる杖ありてそれを届けむために生きてる 石原安藝子

掘り起しきず人参は畦に積まれ足利競馬の厩舎閉ざさる 宇野千代子

我が小屋を野犬の群の五六頭一列になり無言で過ぎ行く 谷口公一

浴槽を洗いておれば亡き夫の帰宅の気配 庭砂利踏んで 本嶋美代子

ゆうらりと席を譲りしスカートの裾は銀翅となりて透けいる 古栗絹江

アスファルトがぬれる匂いを都会では雨の匂いと呼んでるらしい 上澄 眠

父のゐる部隊なりとはわが知らで幼く歌ひし「ラバウルの歌」 仙田篤子

旗を振る自由の女神のやうな日日やさしき夫と息子らを率て 助野貴美子

 歌は、アクションである。Actionである。後半戦は、後日。乞御期待。いい歌揃ってまっせお客さん。
ニックネーム 茶トラのみんく at 22:48| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記
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